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EMA事務局通信629

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EMA事務局通信629                                   2017/04/11

  ■□ 【 コ ラ ム 第 55 回 】

       「知る権利」と青少年の保護

             千葉大学 法政経学部 教授 /
             EMA審査・運用監視委員会委員 齊藤 愛
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会員及び関係者各位

モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)事務局です。
平素は当機構の活動にご協力いただき誠にありがとうございます。

今回は、EMA審査・運用監視委員会委員である、千葉大学 法政経学
部 教授 齊藤 愛先生にご執筆いただきました。

コラム第55回をお届けいたします。

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                 「知る権利」と青少年の保護
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千葉大学 法政経学部 教授 /
EMA審査・運用監視委員会委員 齊藤 愛

近年、青少年がインターネット上の有害サイトにアクセスし、それ
を端緒として様々な犯罪に巻き込まれるというケースが多発してい
る。こうした中で、青少年を有害サイトや犯罪から守るためには、
ある程度、青少年のインターネット情報へのアクセスを制限しなけ
ればならないという議論が生じてくる。

しかし、一方で、青少年も、日本国憲法上、「個人として尊重され
る(13条)」。青少年にも、当然ながら、表現の自由(21条)や知
る権利の保障が及ぶ。

確かに、青少年は、一般的にみて、大人に比して精神的に未熟であ
り、提供される情報の中から自らの人格形成に資するものを選別し
取得していく能力に欠けるところも多い。そのような意味で、青少
年を害悪から保護するために、青少年の知る権利を制約しなければ
ならない場合もあり得る。しかし、その一方で、親や教師をはじめ
社会の大人たちが青少年を「健全」に育成するために施す「教育」
とは、本質的に、教育対象者(青少年)に対してある特定の価値観
を注入するものであるということを忘れてはならない。すなわち、
大人が青少年に対して「教育」を施すということは、必然的に、大
人が良いと信ずるところの価値観を青少年に強制するという要素を
含むものである。憲法19条で保障された思想・良心の自由は、すで
に形成され終わった思想・良心を持ち続ける権利のみならず、特定
の思想・良心を押しつけられることなく、自由に思想・良心を形成
する自由をも含むのであり、青少年にも当然この権利の保障が及ぶ。
そして、青少年が、様々な大人たちからの価値観の強制の中にあっ
ても、なお、自ら主体的に自らの生き方を選択していくことのでき
るような能力を身につけていくためには、一面においては、むしろ
大人よりもいっそう、偏りのない知識や情報に広く接することがで
きる環境を整える必要がある。

このように考えれば、未成年者を害悪から守るべく青少年の知る権
利を制限することが許される場合もあろうが、あるとしても、それ
は、佐藤幸治教授が指摘するように、青少年に与える害悪が、長期
的に見て青少年自身の目的達成能力を重大かつ永続的に弱化せしめ
る見込みのある場合のみに限られる(『日本国憲法論』成文堂137頁)
ということになろう。例えば、青少年に対して性表現へのアクセス
を制限する場合に、その性表現が青少年の自律に対していかなる害
悪を及ぼすのかを顧みることなく、安易に大人が自らの信ずるとこ
ろの「健全」な性道徳を青少年に押しつけていないかどうか、常に
立ち止まって考えていく必要がある。

このような観点から規制の在り方を考えるとき、現在EMAで採用さ
れているような規制方式は理想に近いものであることがわかる。
EMAの制度は、発信者の表現の自由や青少年の知る権利を最大限に
尊重しつつ、青少年を害悪から保護しようとするものであるからで
ある。

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【齊藤 愛(さいとう めぐみ)プロフィール】
千葉大学法政経学部 教授。東京大学法学部卒業。専攻は憲法。
2004年4月〜2013年3月 神奈川大学法学部専任講師及び准教授、
2010年4月〜2011年3月 フランクフルト大学(ドイツ)客員研究員、
2011年4月千葉大学法政 経学部 准教授、2016年7月〜現職。
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 ≪コラムについて≫
 「青少年のインターネット利用」をテーマに配信しております。
  EMA事務局通信をご購読いただいている皆様と、広範かつ深い知
  識・情報を共有することにより、さまざまな角度から「青少年の
  インターネット利用」について考えていきたいと思っております。

  コラムへのご意見・ご感想・ご要望等ございましたら、ぜひとも
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